読書録

飯田育浩『日本の女性・ジェンダーのいちばんわかりやすい歴史の教科書』(グラフィック社・2024年)

歴史分野の編集・執筆に携わってきた著者の「どうして、日本史に登場する女性は少ないのだろう?」という疑問から生まれた1冊。職業、結婚、出産、教育、同性愛、宗教、戦争、ファッション、政治参画、性売買、文学、芸術といったチャプターで構成され、幅広…

フランツ・カフカ著、山下肇・山下万里訳『変身・断食芸人』(岩波書店・2004年)

私が読んだ本には『断食芸人』という『変身』とはまた違う面白さのある物語も収録されているが、この記事では『変身』についてだけ紹介する。 まず、ざっくりとあらすじをお伝えする。 父母に代わって一家を養うために日々働いていた青年、グレゴール・ザム…

私は美術家になるのだ!村田真『美術家になるには』(ぺりかん社・2002年)

今後、よりいっそう「仕事」として美術・芸術に向き合おうと考えている私にとって、非常に励まされる1冊だった。 ただし、美術家の経済面が気になる人、特に子どもが美術家になりたいというのを不安に思う親御さんにとっては、この本に失望してしまうかもし…

自然とつながる感覚を得る。土屋智哉『ウルトラライトハイキング』(山と渓谷社・初版2017年)

表題の「ウルトラライトハイキング」はやっぱり基礎体力があったり、山の知識や経験値が高かったりするからこそできる技術なのかもしれない。 けど、“1泊2日(重量)5キロ以下!ローカットシューズでOK!マットは切って活用!”などといった軽さを味方につけ…

創作活動の道を示す励みになる。坂口恭平・道草晴子(絵)『生きのびるための事務』(マガジンハウス・2024年)

双極性障害と診断されたとき、坂口恭平『坂口恭平 躁鬱日記 』(医学書院・2013年)を読んで、同じ双極性障害の他者の心のアップダウンを知り、この苦しみを知っている人が他にもいるのだと励まされたことを覚えている。 そんな彼の新作が、『生きのびるため…

非常にマニアックでワクワクする1冊。小林章『フォントのふしぎ』(美術出版社・2011年)

こういうマニアックな仕事が、ブランドや商品の印象に大きく影響を与えていると思うと感動する。そのフォントを目にした人に違和感を覚えさせず、フォントを日常生活に溶け込ませながらも、ブランドや商品価値を決定的にするこの仕事は本当にすごいと思った…

黒田尚子『お金が貯まる人はなぜ部屋がきれいなのか 「自然に貯まる人」がやっている50の行動』(日本経済新聞出版・2022年)

はじめに、で著者自身が記しているように「毎日の行動を見直すヒント」が詰まった1冊だ。 モノの多さや環境の変化にヤキモキしていた時期にこの本を購入したのだが、「第1章 部屋を片付ければお金が貯まる」には叱咤激励されたような気持ちになった。 たとえ…

いつか絶対全部食べる……いのうえさきこ『東京世界メシ紀行』(芸術新聞社・2018年)

2016年3月からオンラインに移行した雑誌『クーリエ・ジャポン』に掲載されていたマンガ。まだ雑誌として刊行されていた当時に読者だった私は、このマンガでエチオピア料理の主食であるインジェラを初めて知って「どんな味なんだろう……」と妄想していた。 長…

イーサン・クロス著、鬼澤忍訳『Chatter 「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動に導くための26の方法』(東洋経済・初版2022年)

「あらゆることを悲観的に考えすぎている」と思い悩んだ時に出会い、読み進めた。結果、とても救われた気持ちになった本でもある。 自分の思考がどんどんネガティブになっていくことが気になっていた。ずっと「どうにかしなければ」「でもどうすれば……」を繰…

文字通り、一生モノの内容。鎌田浩毅『新版 一生モノの勉強法』(筑摩書房・2020年)

まず感動したのが読みやすさだ。 テレビや講演会など、人前で話し、伝える経験が豊富な著書だからこそ、その文体が非常に読みやすかった。とにもかくにも、言っていることが分かりやすく、頭にスラスラ入ってくる。文章を読み進めるのが苦手な人にも読みやす…

ミニマリストしぶ『手放す練習 ムダに消耗しない取捨選択』(KADOKAWA・2022年)

精神的にまいってしまった時にこの本を手に取った。この本のおかげでいさぎよくモノを捨てることができ、少し生活や心に余白ができたように感じる。 手放す「方法」だけを知りたい人にとっては、この本の前半部分は長く(ダレて)感じられるかもしれない。 …

境界にたゆたう感覚を得る。朝吹真理子『TIMELESS』(新潮文庫・2024年)

朝吹真理子さんの『きことわ』が好きで、繰り返し読んでいる。 www.tomutomu-corp.com そんな彼女の新刊ということで『TIMELESS』を読んだ。朝吹さんらしい(『きことわ』を描いた人らしい)夢か現か分からない感覚が『TIMELESS』でも度々味わうことができる…

「不条理」について考える。カミュ著 窪田啓作訳『異邦人』(新潮社・初版1954年)

はじめて読んだのは中学生の時だった。 “きょう、ママンが死んだ。”という冒頭にものすごく心が痺れたことを覚えている。太宰治の『斜陽』の冒頭の言葉の美しさにも衝撃を受けたが、カミュの『異邦人』の冒頭もまた、日常的で、普遍的な声色に響くものであり…

一生大切にする、この本。國分功一郎『暇と退屈の倫理学』(新潮社・初版2011年)

私はこの本を一生大切にすると思う。 暇と退屈について、人類史、歴史、経済史的な観点から検討し、後半では哲学的にその問題を扱いながらも生物学的視点からも暇と退屈を紐解く。あらゆる学問とのつながりを感じる多角的な視点に、読んでいてとてもワクワク…

不思議と涙が込み上げてくる。恩田陸『光の帝国 常野物語』(集英社・2000年)

高校生の時、本好きの友人から借りて読んだ思い出の小説を、久しぶりに読んだ。 この小説の好きなところは、物語の主軸となる常野の人々がなぜ不思議な力を持っているのかが具体的に明かされないところだ。彼らには不思議な力がある。ただ、それだけを説明し…

ルールにもっと関心を。青木高夫『ずるい!?なぜ欧米人は平気でルールを変えるのか』(ディスカヴァー・トゥエンティワン・2009年)

父から借りた本のうちの1冊。 義父から、義父が読み終えた文藝春秋を譲り受けているので、自分の父の視点で選ばれた本を読んでみたいなと思い、父が私に勧めたい本があれば貸してくれと頼んでみた。そうして選ばれたうちの1つである。 スポーツやビジネスの…

教育に興味のあるすべての人へ。草野絵美『親子で知的好奇心を伸ばす ネオ子育て』(CCCメディアハウス・2022年)

自分には子どもはいないが、教育分野には興味があるし(大学時代、中学理科の教員免許を取得した)、結婚をきっかけに甥っ子と姪っ子が8人でき、彼らの教育事情も目にしていたから読んでみた。 あと純粋に、コロナ禍のSNSで見かけた草野絵美さんのツイートが…

「利他」超面白い。未来の人類研究センター編『RITA MAGAZINE テクノロジーに利他はあるのか?』(ミシマ社 ・2024年)

「利他」の概念は、生産性や合理化を進める際、ある種の障壁となるかもしれない。 けれどそんな少し間の抜けた概念であり、一歩間違えば悪用されたり、善行の押し付けとなったりする空恐ろしさもある「利他」を、一見相反しそうなテクノロジーや法や社会の世…

3.5%のひとりになりたい。斎藤幸平『人新世の「資本論」』(集英社・2020年)

ある人から見れば、やっぱり過激に捉えられてしまうのかもしれないが、私は今、読んでおいて良かったと思えた。薄らぼんやりと「これって結構変じゃない?」と思っていた現代社会の現状をビシバシ突きつけてくる本である。 そして今ある世界を根本的から覆そ…

主体的に「演じる」。平田オリザ『わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か』(講談社・2012年)

小学2年生、5年生の時に経験した学芸会がきっかけで演劇にハマり、高校の文化祭では自作の脚本で演劇を行い、大学生の時には演劇部で活動するなど、昔から演劇が好きである。 しかし、平田オリザが書く戯曲にはなんとなく苦手意識があった。当時の自分による…

倫理入門!倫理が学びたくなった。蔭山克秀『マンガみたいにすらすら読める哲学入門』(大和書房・2017年)

2020年〜2022年まで武蔵野美術大学通信教育課程に通っていたのだが、そこではじめて「哲学」を受講した。通信教育なので、基本的には教科書と参考書、課せられるレポートと試験のみでしか「哲学」には触れられないが、その世界があまりにも面白く、それ以来…

臨場感が半端ない。角川書店編『ビキナーズ・クラシック 日本の古典 平家物語』(KADOKAWA・2001年)

中学生だったか高校生だったかは覚えていないが、国語の授業で初めて『平家物語』に触れた時、音読した時の言葉の響きがあまりにも面白くて頭にずっと残っていた。那須与一が矢を放つ場面での「ひょうふっと」という表現、続くリズムがクセになった。 この本…

今こそ国語力を見直したい。齋藤孝『頭のよさは国語力で決まる』(大和書房・2021年)

はじめにパラっと立ち読みした際、小・中・高の国語の教科書に掲載されたなじみのある名著の解説に心惹かれ、読むことを決めた。 “国語力”とは、現代文・古文・漢文を読み解く力のことだと思っていたが、本著が扱うのは日本語の読解力や文章力、表現力ばかり…

生きていかなければ!チェーホフ著・神西清訳『かもめ・ワーニャ伯父さん』(新潮社・1967年)

この戯曲を読み終えたのは2020年より前だったかもしれない。映画『ドライブ・マイ・カー』の記事を書くことになり、その参考資料としてこの本を購入した。 きちんと目を通すのは初めてだったが、大学生時代お芝居をやっていたこともあり、「かもめ」は知って…

人生訓だと思った。森毅『数学受験術指南 一生を通じて役に立つ勉強法』(中央公論新社・2012年)

著者・森毅の激烈な言葉が心に気持ちよく(それは同時に痛みでもある!)響く本だった。印象に残った言葉をあげてみる。 「解き方」を知っていて解く、なんて癖は、受験本番にはむしろ有害だ。 量にたよるというのは「勤勉」という名の知的怠惰にすぎない。 …

ようやく光源氏の心境を理解できた。富井健二監修他『マンガで味わう源氏物語』(Gakken・2023年)

2024年の大河ドラマ「光る君へ」を鑑賞する中で、主人公・紫式部と本作についてもっと知りたいと思い、源氏物語に触れることにした。 源氏物語をマンガ化した作品は多々あるが、今回選んだ富井健二監修他『マンガで味わう源氏物語』(Gakken・2023年)は、平…

化学って身近だ!齊藤幸一『身のまわりの元素を調べよう 目で見る元素の世界』(誠文堂新光社・2009年)

化学自体は好きである。しかし好きであっても得意ではない。苦手意識が強く、なかなか理解を深められないまま、受験シーズンが到来し、残念ながら受験科目から切り離した教科である。 あまりにも理解できていないことが長年コンプレックスだった。どうにかし…

東京と地方、男と女、厚い壁。山内マリコ『あのこは貴族』(集英社・2019年)

原作より先に映画を鑑賞していた。映画がとても好きで、文章であの世界を体感したいと思った。原作は映画以上に生々しく、ものすごく楽しめた。登場する女たちは自分たちのやり方でたくましく生き抜く。清々しいラストは映画も原作も同様で、それに救われた…

大人になった今だからこそ読みたい。児玉幸多監修『少年少女 日本の歴史』(小学館・1982年)

小学校〜高校を卒業するまで、社会科が一番の苦手科目だった。というか、社会科の授業にあまりにも興味がなさすぎた。当時を振り返ると、他者の過去や経験を学ぶ社会科より、目の前でワクワクとした変化が起こる理科の方がよっぽど楽しかったのだ。 そんな私…

悪用禁止な「人たらし」の手口。佐藤優『悪の処世術』(宝島社・2023年)

恥を忍んで言うと、歴史の教科書や近代史で度々目にする各国の権力者、独裁者のことを、私はよく知らない。覚えているのは名前ばかりで、どこの誰か、何をしたのか、なぜ「悪」とされるのか、それを知らなかった。だから、それを知るために読んだ。 加えて、…