ただただかっこいい詩人がいた。田村隆一という男。“言葉なんかおぼえるんじゃなかった”

こんにちは、齋藤吐夢です。

 

映画恋の罪で、登場人物の一人である女性教授が読む詩があります。

 

言葉なんか覚えるんじゃなかった。言葉のない世界。意味が意味にならない世界に生きてたらどんなに良かったか”。

 

映画自体も頭に残り続けているのですが、この詩がずっと頭を巡り続けています。

 

『言葉なんかおぼえるんじゃなかった』

 

たまたま立ち寄った本屋さんで、平置きされている本の中にこの本を見つけて、何だか感動したことを覚えている。映画『恋の罪』で女性教授によって音読された詩の一説が表紙にでかでかと書かれている。

手にとって、中をぺらぺらとめくって「ああ、読みたいなあ」と思ったのですがその日は別の小説を買いました。が、いつまでたっても忘れられず、結局三日もしないうちに購入しました。すごい魔力だと思います。

 

ただひたすらに粋な男

この本の冒頭は、詩人からの伝言を依頼した作家の長薗安浩さんという方の、田村隆一という人物を理解するためのメモと、伝言方式の記事を作成するにあたり、取材を依頼しに行った日の出来事などが描かれているのですが、ただもうひたすらにダンディなんです。

型破りなダンディズムで知られる”ともあるのですが、確かにこんな男性がいたら、男でも女でも魅力的に感じてしまう。今のご時世にはあまりお見掛けすることのできない茶目っ気のあるダンディな男性です。

 

例えば田村さんは医者にも奥様にも止められているにも関わらず、いつもどおりに酒を求めます。田村さんの書く詩の中にも何度もウイスキーが登場するのですが、田村さんはこの伝言の企画をたちあげた長薗さんに命じるんです。

ウイスキーをかすめてきてくれ、水はトイレから拝借しろ。

長薗さんも長薗さんで、奥様が外へ出かけて行ったのを確認してこっそりかすめてきて、共に飲み、酔いと興奮がまわり「詩は時限爆弾ですよ!」と田村さんに伝えるんです。

「爆弾か、ずいぶん物騒だな」

「だって、先生の詩、言葉なんかおぼえるんじゃなかったではじまる『帰路』、僕は高校生のときに初めて読んで、十六年以上も忘れていたのに、ふっと思い出して胸がざわつくんだから、危ないよ」

「そうか・・・・・・」田村さんは新しい煙草に火をつけて美味そうに一服した。

「ちょっとは、君も詩がわかったな」 

こんな感じで二人がまた通じ合った後、案の定奥様に見つかって二人ともこっぴどく叱られるわけですが笑、ダンディなのに行動が非常にいたずら好きな少年のようで、心に残るわけです。

 

紡がれた言葉が心に刺さる

その刺さり方も決して乱暴な刺さり方ではなくて、「あ、そうか」と腑に落ちるといった感じ。結婚や詩の話、人生の話。色々な話を語りつくすのですが、そのどれもが女として生まれた私にとっても腑に落ちる優しい(優しいつもりでは言っていないだろうけど)言葉ばかり。

例えば、本当に今まさに私が悩み続けている結婚についての話。私は結婚してしまってから、本当にこれで良かったのかよ!と苛まれることがしばしばあるのだけれど、そんな想いを肯定してくれるような言葉が詰まっている。

 

結婚しなければわからない―――結婚が難しいのは、これに尽きる。~互いに性ホルモンに突き上げられて結婚するんだよな。だから、まずアドバイスとしては、一年間は子供をつくらないこと。一年あれば相手の実態がわかってくるから、その間にパートナー、つまり共同生活者としてやっていけるかを確認するんだ。夫婦ってのは、最小単位のコミュニティだから、パートナーとして組めなければどうしようもない。

 

例えばこの一話を読んで、私は妙に納得して子供を産むか否か決めるのは一年後と決めたわけだが笑、でも、そう迷い続け悩み続けていた私に影響を与えるほど心に刺さるような言葉を紡いでくれる

 

この作品に登場する全ての男性がかっこいい

ちなみに、この本には長薗さんの他に俳優の山崎努さんや写真家の荒木経惟さんなど表現方法が違うだけの素敵な男性が登場するのだが、案の定私はそんな彼らのファンである。好きな男性しか揃っていなかったからこそこの本を購入したのかもしれなかった

私は特に荒木経惟さんの飄々とした語り口と彼の撮るガサガサとした質感の写真が大好きで、毒々しい色味や生々しい女性の肉感が好きで、彼らのもつ空気に溶け込めたらどんなに幸せかと想像してしまった。

田村さんの話ぶりと、巻末の山崎さんの話しぶり、荒木さんの話ぶりは全員どことなく似ているのだ。時々照れくさそうに冗談を交える感じがすごく似ている。真面目に色気のある話の合間に照れ隠ししている姿が本当に素敵だ。

 

そのくらい、今私が求めている男性像そのもののような男性ばかりが登場するから困ってしまう。現実ではなく、二次元の男性に恋をする女性の気持ちが大いに分かった気がする

 

何か一つでも刺さると信じて

とかくこの本の中で、どれか一つでも田村さんの詩があなたに刺さるはずだ。もちろん私は学が足りないから、詩に含まれた感情や想いの全てを読み取ることは叶わなかったけれど、自分の心にぴたっとハマる詩を見つけることができた

 

現にその詩のおかげで頭はクリアになった

何か一つでも刺さると信じて、この本を紹介する。

では。

 

◆本日の一冊◆